「嵐さん、私も一緒に行っていい?」
尋ねると、嵐さんは少し目を細めてうなづいた。
「おう、いいぞ。しっかりついてこい。」
「うん!」
それにしても楽しそうだな、嵐さん。
ワクワクしてるのを隠しようもないくらい目が輝いてる。強い相手に向かって行くときの目だ。
この瞳の奥で相手の行動を幾通りも予想して、対策を考えてる。そんな瞳。
その口元に不敵な笑みが浮かぶのを見て、私はこれ以上ないってくらいの安心を得る。
こんなに頼もしい人は、他にいない。
「それじゃ、俺とメモ子で敵をひきつける。その隙に…」
「わかってますって。その隙にオレが、敵陣に攻め込んでって旗を獲る!でしょ?」
「そうだ。けど、無茶はするなよ。」
「りょーかい!けど、ソレはこっちのセリフですけどね〜。」
そう言いながらニーナは私を見て、ね?と同意を求めてきた。
「ん?」
なんのことだろうと首をかしげてニーナを見ると、やれやれ、と肩をすくめられた。
「相手が手ごわいってこと。」
「うん、わかってる。けどそれならニーナの方が危ないでしょ?」
「んー、だからそういうことじゃなくって……まあいいか。アンタも気を付けてね?」
「うん。ニーナも。」
結局何が言いたかったんだろう。
「行くぞ、メモ子!」
「はい!」
「押忍!」
嵐さんの合図で、私たちは一斉に陣を飛び出した。
それに対し、狙う兄弟の陣からはコウ一人だけが向かってくる。
「新名!」
「はいはい…っと!」
それを見た嵐さんとニーナが互いに目を見交わして、素早く左右にわかれた。
「メモ子!」
「はい!」
名前を呼ばれただけで、それが行くぞって意味だとわかる。
迷わず嵐さんの後に続く私を目の端だけで見て、嵐さんが満足そうに笑ったのが見えた。
「うおらぁぁぁぁぁ!!」
そして、向こうから物凄い勢いで突っ込んでくるコウ。
……なんかもう、迫力がすごい。
ほんの一瞬、ひるんでしまった私。だって顔が怖いんだもん!
「メモ子」
嵐さんがいつもと同じ声根で私を呼ぶ。
走るスピードはそのままだったから、うっかりすれば聞きもらしてしまいそうなその声を
私の耳は、それが世界でただ一つの音のように。
「ついて来い。」
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